突然の興奮・混乱にどう向き合う?
夜間せん妄・不穏の対応方法
こんにちは。訪問診療を中心に行っております千里ホームケアクリニックです。
在宅療養をされている方の中には、夜になると急に落ち着きがなくなったり、幻覚や混乱が起きたりする「せん妄(せんもう)」の症状が見られることがあります。
ご家族にとってはとても驚き、不安な状況ですが、適切に対応すれば多くは落ち着かせることができます。
今回は、「せん妄・不穏が出たときにどう対応したらよいか」を、やさしくご説明します。
せん妄とは?
せん妄とは、一時的に意識や判断力が混乱してしまう状態です。特に夜間に強く出ることが多く、
- 場所や時間がわからなくなる
- 家族の顔がわからなくなる
- 幻覚や妄想が出る(「誰かがいる」「盗まれた」など)
- 落ち着かず歩き回る・叫ぶ・手を振り払う といった症状がみられます。
高齢の方や、体力が落ちている方、入院中の方に多く見られる現象です。 原因はさまざまですが、以下のようなものが関係します。
- 発熱・感染・脱水などの体調変化
- 薬の影響(睡眠薬・鎮痛薬など)
- 睡眠リズムの乱れ
- 見慣れない環境や暗さ・静けさへの不安
- 認知症や脳疾患の影響
不穏とは?
「不穏(ふおん)」とは、せん妄の一部として見られることが多い症状で、 「落ち着かず、イライラ・興奮・攻撃的になる」 状態を指します。つまり、「せん妄」が頭の中の混乱を中心とした状態なら、「不穏」はその結果として体や行動に落ち着きがなくなる状態です。
不穏が出ているときは、本人も強い不安や恐怖を感じており、周囲の言葉や態度に敏感になります。 そのため、周囲が落ち着いて対応することがとても大切です。
ご家族ができる「最初の対応」
夜間にせん妄や不穏が出ても、慌てずに次のように落ち着いて対応してください。
① まず「安全の確保」
- 転倒・転落・ぶつかりなどの事故を防ぐため、周囲の危険物を片付けましょう。
- ベッド柵・手すりを活用し、無理に動かさず安全を優先します。
- 興奮している場合は無理に押さえつけず、距離を取りながら声をかけます。
② 「安心感」を与える声かけ
- 大きな声を出さず、ゆっくり・落ち着いたトーンで話します。
- 「大丈夫ですよ」「ここはお家ですよ」「私は〇〇ですよ」とやさしく伝えます。
- 名前を呼びかけたり、手を軽く握ったりして、安心できる存在であることを示します。
③ 環境を整える
- 照明は真っ暗にせず、常夜灯や柔らかい光を点けておくと安心です。
- 時計やカレンダーを見える場所に置き、「今が夜であること」をわかりやすくします。
- テレビやラジオの音量を調整することで昼夜のリズムをつけるのも効果的です。
④ 体の状態をチェック
- 発熱・脱水・尿の出が悪い・痛み・便秘などがないか確認します。
- 体のどこかに痛みがあると、不穏や興奮につながることがあります。
やってはいけない対応
- 大声で叱る・否定する(混乱を悪化させる原因になります)
- 無理にベッドに押さえつける
- すぐに薬を追加したり、独自に睡眠薬を増やす
※薬の調整は必ず主治医・訪問医に相談してください。
自己判断による睡眠薬・安定剤の変更は、かえって症状を悪化させる場合があります。
受診や連絡の目安
以下のような場合は、すぐに主治医・訪問診療医・訪問看護師へご連絡ください。
- 興奮が続き、数時間たっても落ち着かない
- 幻覚や妄想が強く、暴言・暴力・転倒などの危険がある
- 発熱・息苦しさ・強い痛み・意識低下などの症状を伴う
- せん妄が何日も続く、昼間にも見られる
医療的な原因(感染・脱水・薬の副作用など)が背景にある場合、治療で改善することが多いです。 夜間であっても、訪問診療を受けている方は遠慮せず連絡してください。
再発を防ぐための工夫
夜間せん妄は一度起きると再び出ることもあります。 次のような工夫が予防につながります。
- 朝はしっかり日光を浴びる
- 昼間に軽く体を動かす・会話をする
- 夜は静かで落ち着ける環境を整える
- 水分をしっかり摂る(脱水防止)
- 睡眠薬・鎮痛薬・安定剤などは医師と相談し、適切に使用する
まとめ
夜間せん妄や不穏は、ご本人が「混乱」や「不安」を感じているサインです。 決して「性格が変わった」「わがままになった」ということではありません。
大切なのは、 「安心させる」「安全を守る」「一人で抱え込まない」こと。
夜間のせん妄や不穏は、ご家族だけで対応するには不安や負担が大きいこともあります。訪問診療を受けていれば、夜間や急な症状のときにも医師や看護師へすぐに相談でき、必要に応じて適切な処置やアドバイスが得られます。ひとりで抱え込まず、医療者と一緒に見守れる体制を整えておくことで、ご本人もご家族もより安心して在宅療養を続けることができます。
現在訪問診療を利用されている方は、ためらわずに主治医・訪問診療チームへご連絡ください。 私たちは、ご本人にもご家族にも安心を届ける医療を目指しています。


